1929年生まれ。本名 ウィリアム J.カニンガム。1948年ハーヴァード大学を中退、ニューヨークへ渡り、広告業界に就職する。その後、"William J."のブランド名で帽子作りを始め、カーネギー・ホールのスタジオに帽子サロンを開く。一時兵役に召集されるが、その後またニューヨークに戻り、シカゴ・トリビューン紙でファッションに関する記事を書き始める。アズディン・アライヤやジャン・ポール・ゴルティエといったブランドをアメリカに紹介するのに一役買い、ファッション・ジャーナリズムに影響を与えた。同時期にニューヨークのストリートファッションの撮影も始める。ある日、伝説の大女優グレタ・ガルボの姿を偶然ストリートで撮影したことがきっかけで、一連のスナップ写真を1978年12月ニューヨーク・タイムズ紙で発表し、注目を集める。このことが現在の名物コラム「ON THE STREET」を始めるきっかけにもなった。当時の担当編集者アーサー・ゲルブは、彼の写真を「タイムズ紙のターニングポイントになった」と称した。
ニューヨークで連日、ファッショナブルな人をみつけては写真を撮り続けているカニンガムについて、デザイナーのオスカー・デ・ラ・レンタは「彼ほど過去40~50年間のニューヨークのビジュアル・ヒストリーを撮り続けている人間はいない。ニューヨークのファッション・カルチャーの全貌を彼はとらえている」とコメントしている。アメリカ版ヴォーグ誌編集長アナ・ウィンター曰く「私たちは毎朝、ビルのために着るのよ。」
本作、『ビル・カニンガム&ニューヨーク』は、2010年3月にMoMAとフィルム・ソサエティ・オブ・リンカーン・センターが若手監督の紹介を目的として主催した映画祭、第39回ニュー・ディレクターズ/ニュー・フィルムズのオープニングを飾った。プレミア上映会の会場には、先出のアメリカ版ヴォーグ誌編集長アナ・ウィンター、高名なファッション・ジャーナリストのサリー・シンガー、デザイナーのレイチェル・ロイ、米高級百貨店バーグドルフ・グッドマンのジム・ゴールド社長兼CEOとリンダ・ファーゴ副社長、モデルのヴェロニカ・ウェッブやカルメン・デロリフィチェらファッション界の著名人が多数出席。ちなみにカニンガム本人は、友人たちに上映会のチケットが渡っているかを確認するために会場に立ち寄るが、自身の映画を観ることなく、次の仕事のためにいつものように自転車で会場を後にした。
2012年3月にロンドンで開催されたイギリスでのプレミア上映会には、ロンドン・スタートのデザイナー ブリックス・スミス・スタート、女優ダコタ・ブルー・リチャーズ(『ライラの冒険 黄金の羅針盤』)、ハウス・オブ・ホランドのデザイナー ヘンリー・ホランド、MTVのプレゼンター ローラ・ウィットモア、イギリスのTV番組の人気プレゼンター ジャミーラ・ジャミル、ランウェイフォト界の第一人者 クリス・ムーアら多数のファッショニスタが出席し会場を賑わせた。 また2012年4月23日には、カーネギーホール主催の「メダル・オブ・エクセレンス・ガラ」が開かれ、長年にわたりニューヨークのファッションやカルチャーを捉え続けてきたビル・カニンガムの功績がたたえられた。その会場にも「セックス・アンド・ザ・シティ」シリーズで世界の女性のファッション・トレンドを作り上げた人気女優のサラ・ジェシカ・パーカーやアメリカ版ヴォーグ誌編集長アナ・ウィンターら、ビルと親しいセレブリティたちが続々と来場してビルを祝福した。